新規事業のアイデア発想法とは?ヤマチの成功事例・決断のポイントも
多角化・新規事業

こんにちは、ヤマチユナイテッドの石崎です。
国際情勢の不安定化、気候変動にともなう自然災害の頻発など、経営環境に影響を与える要因は複雑化の一途をたどっています。
さらに、DX化の進展やAI(人工知能)の進化といったテクノロジーの革新により、経営者の皆さんもこれまでのビジネスモデルを進化させたり、見直したりせざるを得ない状況だと感じておられることでしょう。
こうした時代の変化に対応した経営を行うにあたって、新規事業を立ち上げることは非常に有効な一手となり得ます。
しかし、「新規事業で何をするか」と考え始めるとなかなかアイデアが浮かばない、思考がまとまらないと悩んでしまいますよね。
そこで今回は、自社の強みをうまく生かした新規事業を生み出すためのアイデア発想法や、ヤマチ流のフレームワークをご紹介。
さらに、ヤマチユナイテッドの成功事例と、ヤマチが掲げる「新規事業決断のポイント」10項目についても解説します。
既存事業が順調という経営者の皆さんも、新たな視点を得る機会としてご活用いただける内容ですので、ぜひご確認ください。
目次
- 新規事業のアイデア発想法と役立つフレームワークとは?ヤマチ流のフレームワークもご紹介
- ヤマチの新規事業アイデアの成功事例をご紹介
- ヤマチが掲げる「新規事業決断のポイント」10項目をご紹介
- 新規事業や多角化を決断するのに適したタイミングとは?
- 新規事業のアイデア発想法と成功事例を参考に、決断するタイミングも意識しよう
新規事業のアイデア発想法と役立つフレームワークとは?ヤマチ流のフレームワークもご紹介
そもそも新規事業がなぜ必要かというと、一番の理由は「企業のさらなる成長のために必須なプロセスだから」です。
もちろん、現在成長期でガンガン既存事業を伸ばすことが最優先であれば、まずは既存事業に注力すべきでしょう。
しかし、既存事業が順調なうちに次の手を考える、あるいはもうワンステップ上の成長を見据えるといったことをしておけば、よりスムーズに事が進むと思うのです。
特に成熟期に入って業績の伸びが緩やかになれば、いつまでも現状維持というわけにはいきません。
既存事業がある程度頭打ちになってきたなら、利益が出ているうちに、再び事業を活性化する方策として、新規事業の立ち上げが必要になってくるでしょう。
それでは、新規事業のアイデアはどうすれば生まれてくるのか。
新規事業のアイデアを生み出すには、フレームワークの活用が重要です。
代表的な4つのフレームワーク
新規事業のアイデア発想を広げる代表的なフレームワークには、「マンダラート」「SCAMPER(スキャンパー)」「5W1H」「アンゾフの成長マトリクス」などがあります。
マンダラート
3×3のマス目を使い、中心にテーマを置き、その周囲に関連するアイデアを書き出す方法です。
最初に書いた8つのアイデアをさらに展開していくことで、段階的に発想を広げることができます。
SCAMPER(スキャンパー)
置き換え(Substitute)・組み合わせ(Combine)・応用(Adapt)・修正(Modify)・転用(Put to other uses)・削除(Eliminate)・逆転(Reverse)の7つの視点から問いかけることで、新しいアイデアや改良点を見つけやすくする手法です。
それぞれの視点を意識しながら考えることで、既存の考えを多角的に見直し、発想を広げられます。
5W1H
When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)という、6つの問いを使ってテーマを具体化する手法。
抽象的な課題を整理し、考えを具体的な行動や計画に落とし込む際に有効です。
アンゾフの成長マトリクス
考え方を可視化したものとして有名なものが「アンゾフの成長マトリクス」です。
企業が成長戦略を立てる際に用いるフレームワークで、新製品・既存製品と新市場・既存市場の組み合わせで戦略の方向性を整理します。
簡単に説明すると、「どの商品を」「どの市場に」提供して成長するかを考えるためのマトリクスです。
フレームワークの一例として、ヤマチユナイテッドでも利用している「事業多角化のマトリクス」をご紹介します。
ヤマチユナイテッドが利用している「事業多角化のマトリクス」

引用:山地章夫.『新規事業と多角化経営』.クロスメディア・パブリッシング(インプレス).2021年6月25日
縦軸を「技術(ノウハウ)」、横軸を「市場(顧客)」として、既存の事業(現在の市場や顧客)を深掘り発展させるか、新規に開拓・開発するかという観点で4つの方向性を示しています。
- 左上:市場浸透作戦(既存製品・サービスを既存の市場で発展させる)
- 左下:商品開発戦略での多角化(新規製品・サービスを既存の市場で売り出す)
- 右上:市場開拓戦略での多角化(既存製品・サービスを新規の市場で展開する)
- 右下:異業種進出戦略での多角化(新規製品・サービスを新規の市場で展開する)
異業種進出戦略での多角化はなかなかハードルが高く、FC(フランチャイズ)加盟、他社ノウハウの導入、あるいはM&Aによる技術取得などを取り入れることを検討しないと難しい領域です。
今ある自社の経営資源を生かすのなら、「異業種進出戦略での多角化」以外の3領域で自社の強みを生かせる可能性を探るのが発想しやすい方向性です。
ちなみに、「異業種進出戦略での多角化」を除く3領域の方向へ多角化した事業も、いずれ既存事業となり、市場浸透作戦である左上の位置に戻ります。
そうしたらまた、その位置から商品開発、市場開拓、異業種進出へと、新規事業の開発サイクルを繰り返していくのです。
新規事業発想 3大ポイントとZONE
ヤマチユナイテッドでは、以下の図のように新規事業発想のポイントをさらに具体化しています。

「新事業発想 3大ポイントとZONE」の図を解説しますと、「ロマン」「強み」「ソロバン」の3つが重なり合うところを、自社のポテンシャルの全てを発揮して新規事業に取り組める「The ZONE」と定めました。
事業は実際に動かしてみるまで結果がわからない部分もありますが、少なくとも新規事業発想の段階で3つのポイントのどれかが欠けているようでは明るい未来は見えません。
新規事業のアイデアを考える際には、準備段階のフローとして次のことを実践すると効果的です。
自社の強みを知る質問を設定
例えば、自社の強みを発見するための5つの質問を設定してみると良いでしょう。
- 「顧客はなぜ我が社から買うのか?」
- 「我が社から買わないのはなぜか?」
- 「圧倒的な強みがあるとすれば、それは何か?」
- 「強みなのに気付いていないことがあるとすれば、それは何か?」
- 「強みだと思うけれど、勘違いかもしれないものは何か?」
※4の質問「強みなのに気付いていないことがあるとすれば、それは何か?」については、他者に聞かなければわからない場合があるため、事前に顧客や取引先にアンケートを実施するなどの準備が必要です。
それぞれのポイントを押さえた上でどのようなアイデアが出せるかと考えていくと、自社にぴったりの新規事業が見つかるはずです。
顧客ヒアリング
新規事業を検討する際には、まず自社の強みや資源を正確に理解することが重要です。
そのため、既存顧客へのアンケートや対話を通じて、表面化していないニーズや課題を引き出します。
事前に考えられる課題を整理し、顧客がどのような改善を望んでいるか、どのような不便を感じているかを具体的に聞きましょう。
そうすることで、新しいアイデアの着想につなげることができます。
こうした情報をもとに小規模な試験運用を行うことで、リスクを抑えながら事業の実現可能性を確認できます。
競合・海外事例調査
自社のアイデアをより確かなものにするためには、他社の成功例や海外の先行事例を分析することも有効です。
同じ業界の企業や、提供価値やビジネスモデルが似ている企業の事例を調べることで、事業展開の方法、収益化までの流れ、組織運営の工夫など、自社に応用できるヒントを得られます。
海外で成果を上げている事例を参考にする際は、日本市場にそのまま適用するのではなく、文化や市場環境に合わせた調整を行うことが成功のポイントです。
【資料プレゼント】「新規事業を成功に導く4つのフレームワーク」をぜひご活用ください!
コラムを読んでくださった皆さんに「新規事業を成功に導く4つのフレームワーク」をプレゼントいたします。
新規事業を生み出し、確実に成功させるために必要なプロセスをフレームワーク化しており、「発想→展開手法→成功可否判断→具体化」の流れに沿って、事業をチェックすることができます。
こちらのページからダウンロードしていただき、新規事業開発のお役に立てていただければ幸いです。
また、新規事業の立ち上げを成功に導くフレームワークや経営戦略フレームワークについては、以下のコラムでも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
新規事業の立ち上げを成功に導く4つのフレームワークとは?発想~実行までの型を作る方法
中小企業が勝つための経営戦略フレームワークの使い方は?ヤマチの事例も確認
これらのフレームワークでもアイデアが浮かばないなら、実際に行動・体験してみることがおすすめです。
詳しくは「新規事業が思いつかない時の発想法。人脈を広げてアイデアに繋げる」をご参照ください。
ヤマチの新規事業アイデアの成功事例をご紹介
新規事業を成功させるには、成長が見込める分野に目を向け、市場や顧客のニーズを把握することが重要です。
ヤマチユナイテッドでは、新規事業を次々に立ち上げる多角化戦略によって、売上や利益を拡大することに成功してきました。
ここでは、ヤマチユナイテッドの新規事業アイデアの成功事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ヤマチの事例【1】inZONE(インゾーネ)事業
遊休資産の倉庫の活用を考えていた代表の山地 章夫は、リフォームショールームの視察の際、偶然インテリアショップ「アクタス」に出会いました。
「リフォームビジネスとインテリアショップを隣接展開することで、相乗効果を生む」という仕組みに感銘を受け、札幌に中高級路線の本格的ライフスタイルショップ「inZONE with ACTUS」を2007年にオープンし、新しい需要を掘り起こすことに成功しました。
成功のポイント①自社の強みと得意分野を生かす
新規事業の成功には、自社の強みや課題を把握することが不可欠です。
ヤマチユナイテッドは、輸入家具の小売店を手掛けた経験から、「ショップ単体では利益が限られる」ことを理解しており、インテリアショップを集客装置として位置付けました。
また、事業を自社の得意分野に関連させることで、リスクを抑えながら拡張可能な道を確保しました。
これは新規事業アイデアを考えるうえでの好例といえます。
成功のポイント②自社ブランドを育てることによって、事業を派生させる
ヤマチユナイテッドの「inZONE」事業の場合、アクタスのライセンスショップにせず、自社で他事業へ展開可能なパートナーズショップを選択したことが成功につながりました。
「inZONE with ACTUS」をオープンして間もなく、インテリアと一緒に考える家づくりを提案する「インゾーネの家」をスタート。
さらに、中古マンションリノベーション事業「M+(エムプラス)」や、インゾーネがプロデュースしたカフェ&ダイニング「inZONE TABLE(インゾーネテーブル)」を展開し、複数分野での多角化を実現しました。
このように、自社ブランドを育てることによって、事業を派生させ、複数の市場で成功を連鎖させることができたのです。
詳しくは、以下のコラムでご紹介していますので、あわせてご覧ください。
新規事業の成功例をご紹介!偶然の出会いから生まれたinZONE事業
ヤマチの事例【2】きたえるーむ事業
ヤマチユナイテッドは介護業界未経験でありながら、機能訓練に特化したデイサービス「きたえるーむ」のフランチャイズ事業を2011年に立ち上げました。
「柔道整復師」の国家資格を持つ整骨院の院長とのコラボレーションにより、リハビリに加えてマッサージやストレッチの施術をプラスすることで、競合他社との差別化に成功しました。
成功のポイント①「必ず成功させる」と強く信じ、情熱を持って困難を乗り越える
新規事業には予想外の障壁がつきものです。
柔道整復師の院長に協力を依頼した際には一度断られましたが、教育プログラムや顧問契約などを提案し、情熱を持って説得した結果、事業化を実現。
「必ず成功させる」と強く信じる経営者の情熱こそが、周囲を巻き込む行動力となり、事業推進の大きな原動力となりました。
成功のポイント②自社の強みと組み合わせて全国展開
ヤマチユナイテッドは、輸入住宅のブランドをフランチャイズ化しており、全国に加盟店があります。
既存のフランチャイズビジネスのノウハウと組み合わせることで、短期間で全国に展開させることができ、拠点ネットワークを拡大しました。
結果として、直営店とフランチャイズ店舗を合わせ、全国に140店舗以上を展開するほど大きく成長しています(2024年9月現在・出店準備中含む)。
「きたえるーむ」の成功事例について、以下のコラムで詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
デイサービス経営を成功させるコツとは?「きたえるーむ」の成功事例も
ヤマチが掲げる「新規事業決断のポイント」10項目をご紹介

新しいアイデアが思い浮かんだときに、それが実際に事業として成り立つかどうかは、次のポイントで確認しましょう。
- 独自性
- 課題解決力
- 収益性
まず、そのアイデアには既存の常識やサービスと違う、新しい価値や工夫があるかを考えます。
似たような商品やサービスがあっても、自社ならではの特色や独創的な要素で差別化できるかが重要です。
次に、アイデアによって顧客の困りごとやニーズを本当に解決できるかを検討します。
ここを見誤ると、需要が少なく、市場に受け入れられない可能性があります。
それから、事業化した際に利益を生み出せるかを評価します。
特に新規事業では黒字化まで時間がかかることもあるため、中長期的な収益計画を示せるようにしておくことが大切です。
新規事業のアイデアがある程度固まったら、いま一度考えていただきたいことがいくつかあります。
ヤマチユナイテッドでは、「新規事業決断のポイント」として以下の10項目を掲げています。
- その事業は誰を幸せにするのか?(社会性・市場性)
- その事業は儲かるのか?(規模感、収益性、利益率、競合度合)
- 自社のどの強みが使えるか?(強みを認識しておく)
- 自分が好きになれるビジネスか、ワクワクするか?(情熱)
- 他社の参入障壁がある程度高いか?(低い場合はスピードを重視)
- 責任者が確保できるか、スタッフが採用しやすいか?
- 地盤がある本拠地以外の他地域展開は慎重に
- 経営計画をしっかり作成する(投資回収期間、ダウンサイドも)
- 不成功の場合、やめるときの損害見積もり(迷惑・手間の見積もりも)
- 幹部の賛同が得られるか
それぞれ詳しく解説していきます。
①その事業は誰を幸せにするのか?(社会性・市場性)
新規事業は「課題解決のために行うもの」と考えています。
「収益を上げていきたい」といった社内の課題ももちろんありますが、地域や社会の課題を解決する役割もあることを意識してください。
そもそも顧客ニーズのない事業は、地域にも社会にも受け入れられません。
誰の、あるいは何の、どんな不満や問題を解決できるかが出発点となります。
②その事業は儲かるのか?(規模感、収益性、利益率、競合度合)
企業として取り組む事業である以上、利益をしっかり出さないといけません。
前項でご紹介した「新規事業発想 3大ポイントとZONE」の図では「ソロバン」のところですね。
設計した価格で買っていただけるのか、きちんと経費を回収した上で利益が出せるか、次の投資に回せるか。
顧客満足だけを得るのであれば無料で提供すれば喜んでいただけますが、あくまでもビジネスです。
その意味でも、「対価に見合ったサービス・商品を提供しなければならない」という点は心しておくべきでしょう。
また、その事業が将来どのくらいの利益を生むか、どう育っていくかという構想を広げる感覚も重要だと思います。
ニーズはあるけれど市場が狭い、いわゆるニッチすぎる商売であれば、会社の規模にもよりますが、成長性という観点からはあまり多くを望めません。
年商10億の会社であれば、新規事業で将来的に1億、5億といった売り上げを得たいと考えるでしょう。
しかし、年商1,000億以上の会社で、将来的に1億円程度の売り上げしか見込めないのであれば、取り組むべきかどうかを慎重に検討する必要があります。
③自社のどの強みが使えるか?(強みを認識しておく)
新規事業に着手するにあたっては、自社の強みを知り、それらを活用することが成功のカギとなります。
「新規事業発想 3大ポイントとZONE」の図で「強み」の部分にあたります。
自社で持っているあらゆる経営資源の何を活用できるか考えてみましょう。
強みが活用できるということは勝つ確率が上がるということです。
逆にいえば、強みがまったく活用できない事業領域は、かなり博打に近くなります。
そこへ進出したいのなら、他社からノウハウを買う、FC(フランチャイズ)に加盟する方法も考えられるでしょう。
しかし、一番の強みは、やはり既存事業です。
会社が存続しているということは、既存事業に必ず何かしらの魅力や強みがあるからです。
そうでなければ、市場からすでに消えているでしょう。
既存事業をそのほかの強みと組み合わせて発展させることで、相乗効果を狙うのが最も効果的です。
ヤマチユナイテッドでは、「やりたいことを、やるべきことに。」をコーポレートメッセージとして掲げています。
その意味合いとしては「やりたいことやアイデアがいっぱいあっても、強みを生かせるか、市場の課題を解決するものか、収益性が伴っているか、これら全てがそろったところが『やるべきこと』になる」ということです。
やりたいからといって、何でもやれば良いという考え方ではありません。
④自分が好きになれるビジネスか、ワクワクするか?(情熱)
これは「新規事業発想 3大ポイントとZONE」の図の「ロマン」にあたります。
そもそも自分が好きになれるビジネス、やりたいと思っているビジネスであるかどうか。
ワクワクする、使命感を抱いている、世の中に提供し続けるべきだと強く感じる製品・サービスであるかもポイントです。
このような気持ちがないと、利益がなかなか出なくて苦戦するような場面で「もうひと頑張り」がきかないと思うのです。
情熱があれば物事はうまくいきやすく、苦労したとしても乗り越えられる可能性が高まります。
情熱なしに「儲かりそう」「今流行っているから」といった理由だけで新規事業を始めるのはおすすめできません。
ここまでの4項目が特に重要なポイントです。
ヤマチユナイテッドでは、このほかに⑤~⑩の6項目を設定し、全部で10項目を「新規事業の決断のポイント」としています。
⑤他社の参入障壁がある程度高いか?(低い場合はスピードを重視)
自社が参入しやすい事業は、他社にとっても参入しやすい事業となり、競合が激しくなる可能性があります。
その場合は、事業展開のスピード感が大事です。
逆に参入障壁が高い事業の場合は、成功率自体は下がるかもしれませんが、競合が少なく他社が入りにくいブルーオーシャン市場となり得るかもしれません。
⑥責任者が確保できるか、スタッフが採用しやすいか?
新規事業では、責任者やスタッフの確保が事業の成否に大きく影響します。
特に、責任者として有資格者が必要な場合、人材が見つからなければ事業の立ち上げや運営が停滞してしまうでしょう。
また、人材採用が難しい事業モデルは、立ち上げ時だけでなく、長期的な運営においても大きな負担となり得ます。
そのため、採用戦略を早い段階から検討しておくことが重要です。
新規事業責任者の選び方や人材育成のポイントについては、こちらのコラムをご覧ください。
新規事業責任者の選び方とは?向いている人・向いていない人も紹介
⑦地盤がある本拠地以外の他地域展開は慎重に
近年はテクノロジーの革新により、地域を超えた関係構築の方法は広がっていますが、それでも現地での信頼やネットワークを築くことが新規事業成功のカギとなるでしょう。
例えば当グループの場合、本拠地である北海道以外で新規事業を展開しようとすると、現地での取引先や協力業者さんとの信頼関係を築くまでに時間がかかることが予想されます。
本拠地以外では実績が乏しいと判断され、最初の取引やパートナーシップの形成に苦労するケースが多いのです。
このように、本拠地以外の他地域で展開を考える場合は十分な準備を行い、慎重に検討しましょう。
⑧経営計画をしっかり作成する(投資回収期間、ダウンサイドも)
投資回収のシミュレーションをしっかり行なっておきましょう。
新規事業は「うまくいく」ことを前提に経営計画を立ててしまいがちですが、売り上げが想定より2割、3割減った場合など、ダウンサイドも含めて複数のシナリオを想定しておくことが重要です。
例えば、松・竹・梅の3段階の計画を用意しておけば、想定外の事態に直面しても冷静に対応できるでしょう。
「投資回収計画とは?収支計画との違いや計画を立てる際のポイントも」も、あわせてご覧ください。
⑨不成功の場合、やめるときの損害見積もり(迷惑・手間の見積もりも)
新規事業がうまくいかないとなれば、撤退の決断も必要です。
撤退することになった場合に「どれほどの損害が出るのか」といった金銭面だけでなく、自社のイメージダウンや、「どこに、どのような迷惑をかけてしまうのか」といった社会的影響も含めてあらかじめ見積もっておきましょう。
住宅販売事業を例に挙げると、「家を購入されたオーナー様のアフターフォローをどうするか」が大きな課題になります。
撤退後も自社が他地域から出向いて対応するのか、それとも長期的に対応してくれる地元の業者さんに依頼するのか。
また、不動産を賃貸して出店している場合、撤退すれば空き物件となります。
契約期間に満たなければ違約金の問題も発生しますし、その物件を別の事業で再利用するのかも考えておきましょう。
考え始めたらけっこう細かくなるのですが、撤退に伴う金銭的損害だけでなく、取引先や顧客への迷惑・手間まで想定しておかないと、多方面に迷惑がかかってしまいます。
新規事業がうまくいかなかった場合の撤退基準・判断軸については、以下のコラムでご紹介しています。
企業の成長を促進させるための新規事業、うまくいかなかった時の撤退基準、判断軸とは?
⑩幹部の賛同が得られるか
経営者が「よし、新規事業をやろう」と決断しても、幹部にとっては青天のへきれきに感じられるケースが意外とあるようです。
そのような状況では足並みがそろわず、事業がうまく進まないリスクが高まります。
幹部が前向きに新規事業を考えられるよう、雰囲気作りをはじめ、日頃から経営者との意思疎通を図り、コミュニケーションを密にできる環境を整えましょう。
新しい事業ネタや情報が入ったときには、社長一人で決断してしまうのではなく、「どう思う?」と相談したり、「シミュレーションしてみよう」と投げかけたりすることが有効です。
幹部を巻き込みながら新規事業を進めていくことが、成功につながります。
新規事業立ち上げのプロセスについては、別のコラムでも解説していますのでご参考ください。
新規事業立ち上げのプロセスとは?多角化を成功へ導くステップを解説
新規事業や多角化を決断するのに適したタイミングとは?
新規事業は、会社を成長させるために取り組むもの。
既存事業の売り上げの伸びが緩やかになり成熟期を迎えたときは、新規事業を決断するタイミングとして特に意識していただきたいです。
もちろん既存事業の改善やテコ入れが第一義ではありますが、そこに限界があるのであれば、新規事業をどんどん足していく、そうすることで既存事業が伸びるという相乗効果にもつながります。
特に、新規事業が既存事業とまったく関係ない領域だと、相乗効果は生まれません。
やはり既存事業に関連した領域や分野に取り組むほうが、双方の事業を伸ばし、成長できる可能性が高まります。
また、新規事業の決断のタイミングとしては、事業環境の変化だけでなく、既存事業が振るわず盛り返す見込みもないために追い込まれているというケースも考えられますね。
例えば、法改正やパンデミックのような外的要因により、従来の事業が危機的状況に直面することも。
2020年代前半のコロナ禍では、多くの企業が事業転換を迫られました。
いずれにしても、経営体力がゼロに近い状態で新規事業を立ち上げるのは非常に困難で、成功の確率も低くなります。
余力があるうちに決断すべきです。
さらに、2025年の現在は、物価上昇や国際情勢の不安定さ、そしてAIの急速な進化など、ビジネス環境がかつてないほど大きく変化しています。
これからの時代の変化においては、既存事業一本に依存するのではなく、複数の事業の柱を持っておくことがリスク分散につながります。
仮に既存事業が伸び悩んだとしても、新規事業が会社を支える役割を果たすことができます。
軸足を増やして備えておくことは、リスクヘッジの観点からも、新規事業や多角化に取り組むことは「今こそ適したタイミング」といえるのではないかと思っています。
理想的には、事業の柱は最低でも3本は欲しいところですね。
新規事業のアイデア発想法と成功事例を参考に、決断するタイミングも意識しよう
新規事業は、企業の成長や事業の安定化に不可欠であり、成熟期や既存事業の頭打ちを迎える前に準備することが重要です。
新規事業アイデア発想には「マンダラート」「スキャンパー」「5W1H」「アンゾフの成長マトリクス」などのフレームワークが役立ちます。
ヤマチユナイテッドでは「事業多角化のマトリクス」や「新規事業発想 3大ポイントとZONE」を活用しています。
また、新規事業を成功させるために必要なプロセスをフレームワーク化した「新規事業を成功に導く4つのフレームワーク」の資料も無料でプレゼントしていますので、新規事業開発のお役に立てていただければ幸いです。
また、自社の強みや経営資源を把握し、顧客のニーズや課題をヒアリングすることで、実現可能性の高いアイデアを見つけやすくなるでしょう。
ヤマチユナイテッドでは、新規事業を次々に立ち上げる「多角化戦略」によって、売上や利益を拡大することに成功してきました。
新規事業を決断するタイミングとして、既存事業が成熟期を迎えたときに意識していただきたいです。
既存事業と関連した分野で新規事業を追加することは、相乗効果を得られる可能性も高まります。
さらに、これからの時代の変化においては、既存事業一本に依存するのではなく、複数の事業の柱を持って多角化に取り組むことがリスク分散につながるでしょう。
新規事業の判断の際には、ヤマチユナイテッドが掲げる「新規事業決断のポイント」10項目もぜひご参考ください。
ヤマチユナイテッドでは、企業経営に役立つ経営セミナーやワークショップなどのイベントを随時開催しています。
興味のある方はホームページでスケジュールをご確認ください。
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